横断歩道と歩行者が車道を渡るための通行帯です。文字通り、車道を横断している歩道です。ただこの言葉自体に、本来は車道だけど歩行者が渡れるといった意味が感じられます。では横断歩道では歩行者と車両のどちらに優先権があるのでしょうか?運転免許を持っている人であれば、歩行者優先と答えるでしょう。ですが、実はいくつかのケースによって違いがあり、ドライバーからすると意識や道路の構造とルールとで逆転現象が起きています。

 まずはルールを整理してみましょう。判りやすいように車両の立場から考えてみます。

 1. 横断禁止の標識がある道路
  車両の通行が優先される。主に歩道と車道がガードレールで分離されている場合が多く、もちろん横断歩道が存在することは無いので、考察する必要もあまりない。

 2. 信号機のある交差点の横断歩道
  歩行者側の信号が赤の時は車両の通行が、歩行者側の信号が青の時は歩行者が優先される。

 3. 信号機のない交差点の横断歩道

  右方向から来てそのまま直進する車両は横断歩道の付近に歩行者がいなければ素通りできますが、歩行者が横断中もしくは横断歩道付近にいる場合は、車両は停止しなければいけません。優先か非優先かという議論は両者が存在することを前提としているので、常に歩行者が優先であると言えます。

 4. 信号機も横断歩道も無い交差点

  車から見れば信号も無く、横断歩道も無い、要するに車道上に何も遮るものは無いことになりますが、実は3番と同じで常に歩行者優先です。詳しくは警視庁のページの『第三十八条の二』を参照して下さい。

 よく3番目の信号機の無い横断歩道で、車両が素通りする(横断者に進路を譲らない)ことが問題視されますが、この4番目のケースは問題視すらされていません。そもそも車両の立場からすれば、信号機が赤なら必ず停車しますが、横断歩道だけの場合や、ましてや何も遮るものがなければ素通りするというのは自然な判断と言えます。ここに意識とルールとの逆転現象が存在します。

 問題なのは歩行者がルール上優先されているにもかかわらず、ドライバー側にはそういった意識が生じないことです。意識が生じないのは車道上に何も無いからです。信号機がある場合には歩行者用の信号機が赤の時は歩行者の優先権がなくなります。しかし信号機がない場合、あるいは横断歩道も無い場合でも常に歩行者に優先権があります。車両は何もなければ走り続けたいというのが、ある意味当然の習性と言えます。車道上に遮るものが何も無いのに歩行者に優先権があるというのはドライバーには矛盾でしかありません。で、あるならば誰がみても歩行者が優先されているように道路の構造そのものを変える必要があります。

 たまに、商店街なので以下のような脇道の入り口(幹線道路への出口)が歩道となっている場所があります。

 全ての道路の交差部分で必ず歩道がこのように車道を遮っていれば、たとえ停止線が無くても車両は素通りすることはありません。一言で言うなら、信号が無い交差点には横断歩道を書くのではなく、歩道そのものを作るべきです。こんな感じです。

 判りやすいように歩道に色をつけてあります。また、交差する道路はどちらも一方通行の場合をモデルとしました。歩道は必ずしも一段上がっていたり、ガードレールが設置されている必要はありません。とにかく白線(路側帯)で歩道と車道が区分けされていることが重要です。できれば車道とは異なる色がついていたり石畳になっている等、一目で歩道とわかるようになっていればより理想的です。

 従来からある横断歩道(ゼブラゾーン)はできれば信号機がある場合にのみにして、信号機の無い交差点では、従来の横断歩道をやめて、歩道そのものを設置することで道路の構造とルールを一致させるというのが私の考えです。そうすることで様々なメリットがあります。メリットについてはこちらをご覧ください。